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缶詰
シュールコミカル・掌編 |
腹が減った・・・部屋中を漁って食えるものを探すと、三つの缶詰がバッグから転がり出た。ラッキー! |
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腹が減った。 『あは〜ん』 「えぇ!?」 缶切が開けた小さな隙間から、何とも艶かしい女の喘ぎ声が漏れてきたではないか。しかも俺好みの可愛いアニメ声……い、いや、違う!そういう問題じゃない!満腹の状態ならこのシチュエーションは嬉しいかもしれないが、俺は腹が減ってるだけなんだ、ソッチはお呼びじゃない!俺はその喘ぎ声の缶詰を引っ掴み、マッハの速さで缶切を動かした。 『あはうふえへおほうはは〜ん』
喘ぎ声は一まとめになって飛び出し、部屋中に少しだけ漂った後、すっと消えていった。俺は呆然とその余韻を聞いていたが、ハッとして残り二つの缶詰を見つめる。まさか、これも? 『ぐお〜……』
一瞬動物の唸り声かと思ったが、よくよく聞いてみると、どうやらイビキのようだ。40代くらいのおっさんが酔っ払って帰ってきて、玄関に転がったまま爆睡してる感じ?奥さん毛布くらいかけてやってよ……って、違―う! 『ががぎごぐあふげ〜』 喘ぎ声の缶詰と同じように、イビキもまた一まとめになって缶詰から飛び出し、部屋中に充満した後で静かに消え去った。何だってんだよ、もう! まてよ。俺はそこでふと気付いた。
喘ぎ声。イビキ。 すると。
『きゅぅ〜……』
小さな、腹の鳴る音がした。 「嘘だろぉ〜!?」 ラーメンをすする音とか、鍋物のぐつぐついってる音とかしてくるのかと思いきや、まさかその手前の音、腹の虫の音が聞こえてくるとは予想外だった。缶詰に開いた小さな穴からは、次々と様々な腹の鳴る音が漏れ出してくる。 『ぐうぅ〜ぅ』 これは肥満気味の中高年の腹の虫っぽい。 『くるるるる』 そこいらを歩いてる気取ったOLの腹の虫かな。 『ぽこ』 おならみたいだな、これも腹の虫なんだ。へえ…… 自分の腹の虫とシンクロし続ける「食欲」の缶詰の音を、俺は空きっ腹を抱えたまま、飽きもせず黙って聞いていた。二日食わなくても、まあ死にゃしねえだろ。 明々後日までの暇つぶしには丁度いいかもな…… ……腹減った。
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